職場の熱中症対策は義務化に|安全大会で伝えたい労務管理と声かけ

2025年6月1日から、改正された労働安全衛生規則により、職場の熱中症対策が事業者の義務になりました。熱中症のおそれがある作業では、「報告体制の整備」と「悪化を防ぐ手順の作成・周知」が必要です。

この記事では、法改正のポイントと、建設業・製造業の安全大会で伝えたい「労務管理」「睡眠」「声をかけやすいチームづくり」の視点を解説します。

目次

熱中症対策で何が義務になったのか?

労働安全衛生規則第612条の2で、事業者に次の2つが義務付けられました。

  • 熱中症の自覚症状がある人や、熱中症が疑われる人を見つけた人が、報告できる体制を整え、周知すること
  • 作業からの離脱、身体の冷却、医師の診察など、症状の悪化を防ぐ措置の内容と手順を作業場ごとに定め、周知すること

厚生労働省のガイドラインでは、対象となる作業を「WBGT値(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業」としています。

なぜ建設業・製造業で対策が急がれるのか?

厚生労働省の集計によると、2025年の職場での熱中症による死傷者数は1,803人で、統計を取り始めた2005年以降で最多でした。業種別では製造業が365人、建設業が292人と、この2業種が上位です。

体制や手順を「作っただけ」で終わらせず、現場で使える状態にすることが求められています。

労務管理で見直したい3つのポイント

熱中症対策は、気合いや個人の我慢の問題ではなく、作業計画と労務管理の問題です。

  • 休憩と作業中止の基準を決めておく:WBGT値に応じた休憩時間と、作業を中止する基準を作業計画に入れる
  • 暑さに慣れていない人を把握する:ガイドラインでは、体を暑さに慣らす「暑熱順化」に7日以上かけることが示されています。新しく入った人や、4日以上休んだ休み明けの人は特に注意が必要です
  • 短期で働く人も対象に含める:スポットワークなど、夏に短期間だけ働く人への配慮もガイドラインで示されています

睡眠不足は熱中症の大きなリスク

ガイドラインでは、熱中症になった人には、当日や前日に睡眠不足や食欲低下などの体調変化が先に起きている例が多いとされています。

そのため、作業前の確認が大切です。

  • 朝礼で「よく眠れたか」「朝ごはんを食べたか」を確認する
  • 前日の多量の飲酒がないか確認する
  • 退勤後にも体調が悪くなることがあると伝えておく

残業が続いて睡眠時間が削られていないか、勤務の組み方を見直すことも、労務管理としての熱中症対策です。

「しんどい」と言える声をかけやすいチームづくり

報告体制を整えても、「休みたいと言いにくい」職場では報告は上がってきません。ガイドラインでは、2人以上で互いの体調を確かめ合う「バディ制」も報告体制の例として挙げられています。

職長や先輩から、次のような声かけを習慣にすることが効果的です。

  • 「顔色が悪いけど、少し休もうか」
  • 「水分は取れている?一緒に休憩しよう」
  • 「体調が悪いときは、すぐに言っていいからね」

体調の申し出は、プライバシーに配慮して扱うことも必要です。

安全大会で確認したいチェックリスト

  • 報告の連絡先と手順が、全員に伝わっているか
  • 作業場ごとに、悪化を防ぐ手順が決まっているか
  • 新しく入った人や休み明けの人を把握しているか
  • 作業前に体調と睡眠を確認しているか
  • 「休みたい」と言える雰囲気があるか

まとめ

熱中症対策は、2025年6月から事業者の義務になりました。報告体制と手順を整えることに加え、無理のない勤務の組み方、睡眠を含む体調の確認、言い出しやすいチームづくりを一体で進めることが、命を守る対策になります。

当事務所では、社会保険労務士・公認心理師として、建設業・製造業をはじめとする企業の安全大会での講演や、管理職・職長向けの研修を行っています。労務管理と心理の両面から、現場で実践できる内容をご提案しますので、お気軽にご相談ください。

職場の健康と心理、環境の関係については、拙著『部下を知らない上司のための育成の極意』(労働新聞社)でも「健康-心理-環境モデル」として解説しています。著書の一覧はこちらをご覧ください。

参考文献

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