パワハラと指導の違いとは?管理職が知りたい伝え方と防止のポイント

先日、管理職・職員の皆様を対象に、「パワハラと指導の違いを理解し、働きやすい職場環境を整える」をテーマとしたハラスメント防止研修を担当しました。
パワハラと指導を分けるのは、言葉の強さではなく、「目的」と「伝え方」です。この記事では、研修でお伝えした内容をもとに、管理職が明日から実践できるポイントを解説します。
なぜ今、ハラスメント対策が必要なのか?
ハラスメント防止は、マナーの問題ではなく、組織の信頼と人材の定着を守るためのコンプライアンス課題です。
今は、録音やSNSなどで、職場の出来事が外部に残りやすい時代です。「昔はこれくらい普通だった」という感覚は通用しにくくなっています。また、ハラスメントがある職場では人が定着せず、残った人の負担が増える悪循環にもつながります。
パワハラの定義とは?
厚生労働省の指針では、職場のパワーハラスメントは次の3つの要素をすべて満たすものとされています。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- 労働者の就業環境が害されるものであること
また、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラに該当しないとされています。指針では、代表的な言動として「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6つの類型が示されています。
パワハラと指導の違いは?
指導の目的は、部下の成長や業務の改善です。一方、パワハラは、感情のはけ口や相手を支配することが目的になってしまっています。
- 指導:業務上必要な範囲で行う、人格を尊重する、相手が変わっても態度が一貫している
- パワハラ:業務の範囲を超えて人格を否定する、相手を萎縮させる、気分や相手によって態度が変わる
研修では、パワハラは次のように少しずつ進んでいくこともお伝えしました。
「ちょっとした注意・指摘」
↓
「特定の相手にだけ厳しくなる」
↓
「人格を否定するような言動が繰り返される」
本人は指導のつもりでも、気づかないうちに進んでしまうため、早めに気づくことが大切です。
「これくらいできて当然」と感じたときは?
人が仕事を身につけるまでには、「知る→わかる→やる→できる」の段階があります。指導する側が「できる」段階を前提にすると、部下との差が大きくなり、お互いのストレスになります。
研修では、TWI(監督者向けの企業内訓練)の「仕事の教え方」4ステップも紹介しました。
- 準備する(何を教えるか整理し、相手の理解度を確認する)
- やってみせる(急所を強調しながら説明する)
- やらせてみる(間違えたらその場で正す)
- フォローする(質問しやすい相手を決め、確認を減らしていく)
「教えた」と「できる」は違います。相手の段階を見極めることが、メンタル不調や離職を防ぐ第一歩です。
感情的にならない伝え方とは?
怒りは「二次感情」と言われ、その裏には不安や焦りなどの「一次感情」があります。まずは自分の本当の感情に気づき、「事実」と「解釈」を分けて伝えることが大切です。
研修では、次のような伝え方を練習しました。
- アイメッセージ:「あなたはいつも報告が遅い」ではなく、「報告が遅いと、私はフォローが間に合わず困ってしまう」と伝える
- DESC法:事実(D)→気持ち(E)→提案(S)→結果(C)の順で伝える
例えば、「先週の報告期限を過ぎていますね。正直、心配していました。明日中に共有してもらえますか。そうすればチーム全体の確認がスムーズになります」という伝え方です。
相談を受けたときに大切なことは?
最初の声かけが、相談した人の安心感を左右します。「話してくれてありがとう」と受け止め、「気にしすぎじゃない?」「大ごとにしない方がいいよ」といった言葉は避けます。否定せず、決めつけず、まず事実を確認し、一人で抱え込まずに相談窓口や上司につなぐことが大切です。
まとめ
パワハラを防ぐには、「厳しく言わない」ことではなく、目的を持ち、相手の段階に合わせて、尊重しながら率直に伝えることが大切です。
当事務所では、社会保険労務士・公認心理師として、パワハラ防止研修、管理職向けのコミュニケーション研修、TWIを活用した教え方の研修を行っています。組織の課題に合わせて講義とワークを組み合わせた内容をご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。
パワハラの基本的な考え方については、拙著『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル 部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)でも解説しています。著書の一覧はこちらをご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
