管理職と一般職のハラスメント研修|指導と受け止めの共通言語をつくる

当事務所では、管理職向けと一般職向けの研修を組み合わせ、「指導する側」と「受け止める側」の双方向から職場の共通言語をつくる「双方向型ハラスメント研修」を行っています。同じテーマを両方の立場から学び、最後に共通の判断基準で合意をつくる研修です。
この記事では、なぜ両方の立場で研修を行うのか、それぞれの研修で何を伝えているのかを紹介します。
なぜ管理職と一般職の両方に研修が必要なのか?
ハラスメントの問題は、管理職だけ、または職員だけが学んでも解決しにくいからです。
管理職だけが研修を受けると、「何を言ってもパワハラになるのでは」と萎縮し、注意すべきことを注意できない「何も言わない上司」が生まれることがあります。一方で、職員の側に判断の基準がないと、厳しい指導と不適切な言動の区別がつかず、「パワハラかどうか」の対立になってしまいます。
ハラスメントは、①関係性、②場面、③お互いの心理状況によって受け止め方が変わります。だからこそ、両方の立場から同じ基準を持つことが大切です。
管理職向け研修:パワハラを恐れず、適切に指導する
管理職向けの研修では、「指導しないこと」は配慮ではなく、組織全体のリスクであることをお伝えしています。問題行動を放置すると、ルールを守っている職員に負担がかかり、新人も育たなくなります。
研修では、指導とパワハラの違いを、目的・頻度・言い方・場所・改善支援・記録の6つの視点で整理しました。そのうえで、指導の前に次の4項目を整理することを練習します。
- 目的:なぜ指導するのか(業務改善・育成・安全確保など)
- 内容:何が起きたか、どのルール・基準に関係するのか
- 方法:どこで、どのように、どのタイミングで伝えるか
- 改善可能性:何を、いつまでに、どう改善してほしいか
例えば、「もっと責任感を持ってください」ではなく、「今月、提出期限を過ぎた記録が3件ありました。遅れそうな場合は前日までに報告してください」と伝えます。
また、「パワハラだ」と言われたときに、「そんなつもりじゃなかった」と指導をやめてしまうのではなく、問題とされた言動を確認し、事実を整理して人事や上位者に相談し、記録を残したうえで、業務上必要な指導は続けることもお伝えしています。
一般職向け研修:指導の受け止め方と職場のルール
一般職向けの研修では、「嫌だった」という気持ちを大切にしながらも、職場として対応するには事実の整理が必要であることをお伝えしています。
指導を受けたときは、感情と事実を分けて、次の4つを確認します。
- 何が問題だったのか
- どのルール・基準に関係するのか
- どう改善すればよいのか
- 言い方や方法に問題があるか
納得できないときは、「それ、パワハラですよ」と言うのではなく、「事実確認→自分の認識→質問・要望」の順で伝えます。ハラスメントが疑われる場合は、いつ・どこで・何を言われたかを整理して相談窓口に伝えます。「パワハラかどうか」を自分で決める必要はありません。
あわせて、就業規則などの職場のルールを守ることや、報告・連絡・相談の大切さも学びます。ルールを守ることと、自分の尊厳を守ることは矛盾せず、両立できます。
共通の4つの視点で「職場の合意」をつくる
双方向型ハラスメント研修の最大のポイントは、管理職と一般職が同じ4つの視点を共有することです。
- 目的:何のための指導・指摘か
- 内容:仕事上必要な事実に基づいているか
- 方法:伝え方・場所・タイミングは適切か
- 改善可能性:何を改善すればよいかわかるか
指導する側は「感情ではなく、事実に基づいて指導する」、受け止める側は「感情と事実を分けて考える」。この共通の視点があることで、「パワハラかどうか」の対立から、「事実と改善を確認する建設的な対話」へと変わっていきます。研修では、両方の研修で使える共通のワークシートを使い、自分の職場の課題を振り返っていただいています。
まとめ
ハラスメント防止は、管理職が言動に気をつけるだけでも、職員が我慢するだけでも実現しません。指導する側と受け止める側が、同じ基準で対話できる「職場全体の共通言語」をつくることが大切です。
当事務所では、社会保険労務士・公認心理師として、管理職向け・一般職向けのハラスメント研修を、職場の課題に合わせて組み合わせてご提案しています。介護・福祉をはじめ、さまざまな業種でご相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
パワハラの基本的な考え方については、拙著『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル 部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)でも解説しています。著書の一覧はこちらをご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
