不妊治療と仕事の両立支援とは?企業が進める5つのステップと職場の配慮

不妊治療と仕事の両立支援は、社員の離職を防ぎ、誰もが安心して働ける職場をつくるための取り組みです。厚生労働省の「令和5年度 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」では、不妊治療を経験した人のうち26.1%が、仕事との両立ができなかった(できない)と答えています。

この記事では、企業が両立支援を進めるためのステップと、制度づくり・職場での配慮のポイントを、厚生労働省のマニュアルをもとに解説します。

目次

なぜ不妊治療と仕事の両立支援が必要なのか?

不妊治療は、通院の回数が多く、日程も急に決まることがあるため、仕事との調整が難しいからです。

厚生労働省のホームページでは、両立が難しい理由として、通院回数の多さ、精神面での負担の大きさ、通院と仕事の日程調整の難しさが挙げられています。また、治療を受けていることを職場に知られたくない人もいます。

両立できずに退職する人が出れば、職場にとっても経験や人材の損失です。両立支援は、福利厚生ではなく、人材の定着のための取り組みといえます。

企業が両立支援を進める5つのステップ

厚生労働省の「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」では、次の5つのステップが示されています。

  1. 取組方針の明確化、取組体制の整備:経営トップが方針を示し、担当者や担当部署を決める
  2. 実態把握:アンケートや面談などで、社員の理解度やニーズを把握する
  3. 制度の設計・取組の決定:必要な休暇制度や働き方を決め、就業規則などに定める
  4. 運用:制度を全社員に周知し、相談しやすい職場をつくる
  5. 取組実績の確認、見直し:利用状況を確認し、使いにくい点を改善する

制度を作るだけでなく、「使える職場」にするところまでが両立支援です。

どのような制度を整えればよい?

不妊治療に必要な通院の日数や時間は人によって違うため、柔軟に使える制度を組み合わせることが大切です。

  • 不妊治療にも使える休暇制度(不妊治療に限定しない休暇も含む)
  • 年次有給休暇の半日単位・時間単位での取得
  • フレックスタイム制、時差出勤、短時間勤務、テレワーク

マニュアルでは、不妊治療のための制度であることを前面に出すと、周囲に知られたくない人が使いにくい場合もあるとされています。そのため、病気の治療や家族の事情など、他の目的にも使える制度とまとめて導入する方法もあります。また、男女とも利用できる制度にすること、パートなどの非正規雇用の人も対象にすることもポイントです。

休暇制度を新しく作る場合は、対象者や手続き、休暇中の賃金の扱いなどを就業規則に定める必要があります。

上司や同僚はどのように配慮すればよい?

一番大切なのは、本人の意思を尊重し、プライバシーを守ることです。

厚生労働省の「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」では、上司と同僚の配慮として、次のような点が挙げられています。

  • 上司:会社として両立を応援していることを伝え、本人が望む働き方を確認する。仕事をカバーしている社員の業務量にも目を配り、必要に応じて分担を見直す
  • 同僚:本人の意思に反して、治療のことを他の人に知らせたり、詮索したりしない。症状や治療の結果などを、むやみに聞き出そうとしない

マニュアルでは、不妊治療などの機微な個人情報を本人の了解なく他の人に暴露することは、パワーハラスメント(個の侵害)に該当する場合があるとされています。

「いつかは自分も助けてもらうかもしれない」というお互い様の気持ちが、制度を使いやすい職場風土につながります。

国の支援制度も活用しましょう

厚生労働省は、次のような支援を行っています。

  • 不妊治療連絡カード:社員が会社に治療中であることを伝えたり、制度を利用したりするときに使える様式
  • 両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース):休暇制度などを整え、利用させた中小企業事業主への助成金
  • くるみんプラス等の認定:不妊治療と仕事の両立に積極的に取り組む企業の認定制度

まとめ

不妊治療と仕事の両立支援は、方針を示し、実態を把握し、柔軟に使える制度を整え、使いやすい職場をつくる、という流れで進めることが大切です。

制度を作ることと同じくらい、「相談しても大丈夫」と思える職場風土づくりが欠かせません。

当事務所では、社会保険労務士・公認心理師として、両立支援制度の設計や就業規則の整備、助成金の活用、管理職・社員向けの研修を支援しています。社員が安心して働き続けられる職場づくりを、お気軽にご相談ください。

管理職が押さえたい労務のポイントについては、拙著『悩める管理職のための労務トラブルQ&A』(ベストブック)でもQ&A形式で解説しています。著書の一覧はこちらをご覧ください。

参考文献

シェアはこちらからお願いします
  • URLをコピーしました!
目次