ハラスメント相談窓口に必要な“本当に大切なこと”

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ハラスメント相談窓口の役割は単に話を聞けばよいだけではありません

多くの職場では、ハラスメントの相談窓口を人事部や総務部の職員が担当するケースが一般的です。しかも、専任ではなく、通常業務と兼務していることがほとんどです。その一方で、相談対応に関する体系的な教育を受けないまま担当を任され、「自分の対応は正しいのか」「どこまで踏み込んでよいのか」と不安を感じながら業務にあたっている方も少なくありません。

現場では、「話を聞いてあげてほしい」「人事(総務)だから分かるだろう」といった感覚で、正式な準備や教育を行わないまま相談窓口を任命してしまうことがあります。その結果、担当者が一人で抱え込んでしまったり、相談を受け続けることで精神的に疲弊したりするなど、本人にとっても組織にとってもリスクが高まります。

さらに問題なのは、知識や役割理解が不十分なまま「善意だけ」で対応した結果、セカンドハラスメントにつながってしまうケースです。以下では、相談窓口の基本的な役割とあわせて、「よかれと思ってやりがちだが、実は不適切な対応」の事例を紹介します。

「よかれと思って」行った結果、セカンドハラスメントにつながった事例

事例① 共感しすぎてしまったケース

■状況

人事部の担当者が相談窓口として、上司の発言について相談を受けた。相談者は感情的になっており、「皆の前で否定され、とてもつらかった」と訴えていた。

■善意からの対応

担当者は、「それはひどかったですね」「よく耐えましたね」と強く共感し、相談者を落ち着かせようとした。

■何が問題だったか

感情や評価に同調したことで、「会社としても不適切だと判断した」と相談者が受け取り、後の事実確認で異なる見解が出た際に、相談者が裏切られたと感じてしまった。結果として、相談対応そのものが二次的な傷つきにつながった。

事例② その場で判断してしまったケース

■状況

総務担当者が電話で相談を受けた。内容を聞いた段階で、担当者自身は「ハラスメントに該当する可能性が高い」と感じていた。

■善意からの対応

「お話を聞く限り、ハラスメントに当たる可能性が高いですね」と伝え、相談者を安心させようとした。

■何が問題だったか

正式な事実確認前に判断を示したことで、その後の調査が「結論ありき」と受け取られ、組織としての公平性に疑問が生じた。また、担当者自身が判断責任を背負う形になり、精神的負担も大きくなった。

事例③ 一人で抱え込んでしまったケース

■状況

人事担当者が複数回にわたり同じ相談者から相談を受けていた。相談内容は徐々に重くなり、相談者の不眠や欠勤の話も出てきた。

■善意からの対応

「最後まで話を聞こう」「自分が受け止めなければ」と考え、上司や他部署への共有を後回しにした。

■何が問題だったか

適切なタイミングで組織につながなかったため、対応が遅れ、相談者の体調悪化を止められなかった。また、担当者自身も強い心理的負担を抱えることになった。

事例④ 記録に感情を書いてしまったケース

■状況

相談窓口担当者が、相談内容を丁寧に残そうとして記録を作成した。

■善意からの対応

「深刻さを伝えたい」と考え、「強い精神的苦痛を受けている」「明らかに不適切な発言だった」と記載した。

■何が問題だったか

記録が評価文になり、後から確認した担当者が先入観を持ってしまった。結果として、事実整理が難しくなり、対応の公平性を損なうおそれが生じた。

事例⑤ できない約束をしてしまったケース

■状況

相談者が「絶対に名前は出さないでほしい」「相手には知られずに解決してほしい」と強く求めた。

■善意からの対応

相談者を安心させるため、「分かりました。誰にも言いません」と約束してしまった。

■何が問題だったか

実際には、組織対応を行うために共有が必要となり、後から約束を覆す形になってしまった。結果として、相談者の不信感が強まり、相談窓口への信頼を損なった。

教育や対策

このようにならないように会社での教育や対策が必要だったのでしょうか。

1.相談窓口の役割

相談窓口は、解決者でも判断者でもありません。

役割は、

・話を遮らずに受け止める

・事実関係を整理する

・組織として適切な部署・担当者につなぐ

この3点に徹することです。

しかし実務では、

・「それは明らかにハラスメントです」と断定してしまう

・「会社として何とかします」と曖昧な約束をしてしまう

・自分のところで解決しようとして抱え込んでしまう

といった対応が起こりがちです。

これらは責任感から出やすい行動ですが、相談窓口の役割を超えてしまう行為であり、後の対応や事実確認を難しくします。

2.相談者との関わり方

相談対応では、「共感」と「同調」を区別することが重要です。

相談者が経験した出来事や状況は受け止めますが、評価や断定に乗ってはいけません。

よくあるのが、

・「それはひどいですね」「許されないですね」と評価してしまう

・「相手が悪いです」と正しさを示してしまう

・「私がついていますから大丈夫です」と約束してしまう

といった対応です。

これらは相談者を安心させたいという善意から生じますが、中立性を失い、後に軌道修正ができなくなる原因になります。

相談窓口は「寄り添いすぎない」ことも重要な姿勢です。

3.ヒアリングの仕方

ヒアリングでは、感情を否定せずに受け止めつつ、

・いつ(日時・期間)

・どこで

・誰が

・何を言った/されたか

・頻度・継続性

・現在困っている点

といった事実を整理します。

しかし、

・感情を深掘りしすぎてしまう

・「どういう意図だったと思いますか」と推測を促してしまう

・解釈を事実のように扱ってしまう

といった対応も少なくありません。

これはカウンセリング的対応に近く、相談窓口のヒアリングとしては不適切です。

感情は受け止めますが、整理するのはあくまで事実です。

4.記録の取り方

相談記録は、後から第三者が読んでも事実関係が把握できる形で残します。

原則は、

・推測を書かない

・評価を書かない

・発言は原文に近く記載する

ことです。

ところが、

・「強く叱責され精神的に追い込まれている」

・「明らかに不適切な発言だった」

といった表現を書いてしまうことがあります。

これは状況の深刻さを伝えたいという善意からですが、記録が評価文になり、事実整理を歪める原因になります。

記録は「事実中心」が原則です。

まとめ

ハラスメント相談窓口では、「よかれと思ってやったこと」が、中立性を失わせ、セカンドハラスメントを招き担当者自身を疲弊させるという結果につながることがあります。相談窓口に必要なのは、正しさではなく安全な対応です。対応の型を持ち、判断や解決を一人で背負わず、組織として対応する仕組みを整えることが重要です。

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