教えたのにできない、の正体

介護事業所支援において、「教えているのにできない」と人材育成のお問い合わせがありました。そこで、問題を整理すると以下のことが浮かびあがってきました。
- 自律的に動いてほしいが、現場では受け身の行動が目立つ
- 判断に迷っても報告・連絡・相談が上がってこない
- 作業が止まっていても、管理者が後から気づくことが多い
- 「なぜその対応が必要なのか」が理解されないまま業務が進んでいる
これらは、個人の能力や意欲の問題というよりも、教え方と判断基準が整理されていないことに起因しているケースが多く見られました。
実際、管理者からは、
「自分だったら何も言われなくても分かることが、なぜ分からないのかが分からない」
「どう教えてよいのか分からない」
「『こうやって』と伝えても、『では、どうしたらよいのですか』と聞かれてしまい、困っている」
という声が上がっていました。
皆さんの事業所でも、同じような経験はないでしょうか。
管理者が経験や感覚で理解していることは、言語化されていないため、相手には伝わっていないことが少なくありません。このような場面で有効なのが、TWIのJIに基づく4段階の教え方です。
TWIの4段階(教え方の基本)
① 習う準備をさせる
なぜこの仕事が必要なのか、全体の流れや目的を伝える
② 作業を説明する
何を、どの順番で行うのかを具体的に示す
③ やらせてみる
実際に本人にやってもらい、理解度を確認する
④ あとをみる
任せきりにせず、判断や行動が適切かを継続的に確認する
ある程度の常識や判断力を持っている人であれば、この4段階によって業務理解が進み、自立につながります。
しかし一方で、一定の常識や判断が十分でない人の場合、この4段階だけでは不十分な場面もあります。
たとえば、「ここで報告して」と伝えても報告が上がらない。
その背景には、
- いつ報告すればよいのか分からない
- どの程度で「報告が必要」と判断すればよいのか分からない
- そもそも「分からないことが分からない」
という状態があります。
このような場合、作業手順だけでなく、判断のポイントを具体的な事例で伝えることが不可欠です。
今回の管理者は、生成AIを活用して記録作成などを工夫されていたこともあり、「教えるよりも、生成AIで対応できる仕組みを作ればよいのではないか」という考えを持たれていました。
しかし、特に訪問介護において重要なのは、ご利用者様の安全に関わる判断です。
危険な兆候や注意すべきタイミングは、システムだけでは拾いきれません。
これらは、「こういう場面では、実際にこんなことが起きた」「この判断が遅れると、こういうリスクがある」といった具体例を通じて、OJTで理解を深めてもらう必要があります。
介護事業所では、虐待防止研修やビジネスマナー、報告・連絡・相談の研修が行われています。
これらの知識は有効ですが、知っているだけでは行動に結びつかないのが現場の実情です。
だからこそ、
- 研修で判断の枠組みやフレームを知る
- TWIの4段階を使って、現場で具体的に当てはめる
- そのうえで、生成AIを記録や振り返りの補助として活用する
という組み合わせが重要になります。
教育を省略してシステムに任せるのではなく、人が判断すべき部分は人が育て、AIは補助として使う。
これが、介護現場における現実的な人材育成の方向性です。
研修のご案内
本テーマについては、管理者・現場双方を対象に、TWIの考え方を取り入れた「教え方」「判断基準」「OJTの進め方」に関する研修を行っています。
ここで扱っている課題は、訪問介護や福祉の現場に限ったものではありません。
「自分だったら分かる」「教えたつもりなのに伝わらない」「なぜ報告・連絡・相談が上がってこないのか分からないといった悩みは、製造業、建設業、医療、サービス業など、多くの産業で共通して見られる課題です。
だからこそ、誰が教えても一定の水準で伝えられる教え方の型と、判断を属人化させないための枠組みを持つことが重要になります。
TWIについては、以下のリンク先をご確認ください。
研修内容や実施方法(対面・オンライン)については、業種・職種に応じて柔軟に設計しています。
どうぞお気軽にお問い合わせください。
