50人未満事業所のためのストレスチェック実務ガイド

目次

最近の精神障害に関する労災の発生状況について

 令和5年度「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害に関する労災補償の全体傾向は、請求件数・支給決定件数ともに大幅な増加傾向にあります。請求件数・支給決定件数ともに最多の業種は「医療・福祉」であり、次いで「製造業」「卸売業・小売業」が続いています。なかでも、「社会保険・社会福祉・介護事業」が突出して多い状況です。また、非常に注目すべき点として、支給決定件数は月20時間未満の時間外労働が最も多く、精神障害の労災は長時間労働だけでは説明できないことが分かります。支給決定に至った主な出来事としては、「パワーハラスメント」「業務に関する事故・災害の体験・目撃」、「セクシュアルハラスメント」が多くを占めています。これらの結果から、残業対策だけでなく、指導の仕方、職場の人間関係、管理職としての関わり方が、精神障害に関する労災リスクを大きく左右するといえます。そのためには、まず現在の職場環境を正しく把握することが重要です。

ストレスチェック制度の位置づけ

現在、ストレスチェック(いわゆる心の健康診断)は、常時50人以上の労働者を使用する事業所では義務化されています。これまで50人未満の事業所については猶予措置とされてきましたが、労働安全衛生法において、今後3年以内に実施されることが決まっています。ストレスチェックは、一般的な健康診断と同様のものと誤解されがちですが、制度の目的はメンタル不調者の発見ではなく、未然防止にあります。そのため、ストレスチェックを実施するにあたっては、ストレスチェック実施者の選任が必要となります。実施者としては、産業医や保健師が選任されることが一般的ですが、一定の国家資格を有し、かつストレスチェック実施者養成研修を修了した者であれば、実施者として選任することが可能です。実施者の主な役割は、調査票の選定高ストレス者の選定基準について専門的見地から意見を述べること医師による面接指導が必要かどうかの確認です。

50人未満事業所におけるストレスチェックへの対応について

50人未満の事業所においても、今後はストレスチェックへの対応が求められます。対応にあたっては、まずストレスチェック実施者を選任し、次に実施計画およびスケジュールを決定します。そのうえで、計画に基づきストレスチェックを実施し、結果は必ず本人に直接通知します。その結果、高ストレスと判定された労働者から面接指導の申出があった場合には、医師による面接指導を実施し、医師から就業上の配慮等に関する意見を聴取します。その意見を踏まえ、必要に応じて事後措置を行うという流れになります。また、ストレスチェックには集団分析という仕組みがあります。
50人未満の事業所では「義務対応」に意識が向きがちですが、集団分析を活用することで、職場全体の傾向や課題を把握し、職場環境の改善につなげることが可能です。

50人未満事業所がつまずきやすいポイント

50人未満の事業所では、ストレスチェックを導入する際に、次の点でつまずきやすい傾向があります。

①「健康診断と同じ」と誤解してしまう
ストレスチェックは、身体の異常を見つける健康診断とは異なり、メンタル不調の未然防止を目的とした制度です。「不調者を見つけるための検査」「問題のある人を探すもの」と捉えてしまうと、制度の趣旨から外れてしまいます。

② 実施者の選任を後回しにしてしまう
ストレスチェックは、誰でも実施できるものではありません。実施者の選任を曖昧にしたまま進めてしまうと、制度上の不備や個人情報の取扱いリスクにつながります。

③ 結果の取扱いに不安を感じ、活用できない
「結果をどう扱えばよいのか分からない」「職場に知られたら問題になるのではないか」と不安を感じ、結果を眠らせてしまうケースが少なくありません。
しかし、個人結果は本人のみ、集団分析は職場改善のためという役割分担を理解すれば、過度に恐れる必要はありません。

④ 集団分析を行わず「やっただけ」で終わる
「人数が少ないから意味がない」として集団分析を省略してしまうことがありますが、小規模だからこそ職場の傾向が見えやすく、改善につなげやすいという利点があります。

まとめ

精神障害に関する労災は、長時間労働だけでなく、職場の人間関係や管理職の関わり方が大きく影響する時代になっています。ストレスチェックは、単なる法令対応ではなく、職場のリスクを可視化し、トラブルや労災を未然に防ぐための重要な仕組みです。

50人未満の事業所であっても、

  • 実施者を適切に選任すること
  • 計画的に実施し、結果を正しく扱うこと
  • 集団分析を職場環境改善に活かすこと

によって、実効性のある対策につなげることが可能です。
小規模事業所だからこそ、現場に即した改善を進めやすいという特性を活かし、ストレスチェックを「守り」と「予防」の両面で活用していくことが求められます。

詳しく相談したい方はこちらへお問い合わせください。

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