管理職向け研修「労務管理の基礎知識」を実施しました

管理職を対象に「労務管理の基礎知識」研修を実施しました。
本研修では、現場の実務に即した形で「労働法規」「健康管理」「ハラスメント防止」などをテーマに、基礎から学び直す機会としました。参加者からは多くの実践的な質問が寄せられ、現場での悩みや疑問に対して講師の視点から回答する形で進行しました。
以下に、研修で取り上げた質問の一部と、それに対する私の見解をご紹介します。
ケース1:残業に頼らざるを得ないスタッフへの対応
「以前に勤めていたスタッフから“残業代がないと生活できない”と言われました。
残業は健康管理上避けるべきと伝え、家計の支出の見直しも提案しましたが納得されず困りました。
就業規則では副業は禁止されています。最終的にそのスタッフは退職してしまい、この対応が良かったのか悩んでいます。」
▶ 私の見解:
問題の本質を的確に捉えており、適切に対応されたと思います。
残業はあくまで臨時的なものであり、生活費の補填を目的として継続することは望ましくありません。
就業規則や36協定の範囲内で運用されていること、スタッフの生活状況に配慮しつつも制度に則った姿勢は管理職として大切です。
スタッフの受け止め方は人それぞれですので、あまりご自身を責めずにいてください。
ケース2:実質的に働いている「休憩時間」の扱い
「当事業所では昼休憩が45分+終業後15分とされていますが、実際にはその15分間も働いています。
それなのに残業申請ができず、困っています。」
▶ 私の見解:
「休憩時間」とされている時間に実際の業務が発生している場合、その時間は労働時間に該当します。
また、休憩は「労働時間の途中に一斉に自由に取る」ことが原則です。終業後の15分間を休憩扱いにすることは、本来の休憩の考え方からも外れており、制度の見直しが必要です。
ケース3:有給休暇が取りにくい職場の雰囲気
「有給休暇を取ることは法的に認められていると理解していても、周囲の目を気にして取りづらい雰囲気があります。」
▶ 私の見解:
年次有給休暇は労働者の正当な権利であり、取得理由の申告も不要です。
職場全体で安心して休暇を取得できる風土づくりが重要です。
管理職自身が積極的に休暇を取得し、見本となることが風土改善への第一歩です。
ケース4:退職前の有休取得について
「退職予定のスタッフから“残っている有休をすべて使いたい”と申し出がありました。これが続くと運営に支障が出ないか心配です。」
▶ 私の見解:
退職前の年休取得は、原則として認められるべきです。
ただし、業務の引継ぎや他のスタッフとの調整が必要になるため、職場としてガイドラインを定め、計画的な取得を促す仕組みがあると良いでしょう。
ケース5:管理者が一方的に有休を割り当てたケース
「スタッフが体調不良だったり有休が残っていたりする場合に、管理者の判断で“良かれと思って”有給処理をしていました。
ところが、“勝手に年休を使われた”という声が上がり、戸惑っています。」
▶ 私の見解:
年次有給休暇は、原則として労働者本人の申請に基づいて取得するものです。
管理者が一方的に判断して日付を決定することは、制度上適切ではありません。
今後は本人の意思確認を行い、記録を残すようにしてください。職場としては「計画的付与制度」の導入も検討する価値があります。
最後に
研修中に交わされた実践的な質問とそれに対する見解は、参加者から非常に好評でした。
管理職の役割には、制度の理解と適切な運用だけでなく、現場の声に耳を傾ける姿勢も求められます。
今後も、スタッフが安心して働ける環境づくりのために、学びと対話を重ねていきたいと思います。
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